生きる喜び 死ぬ楽しさ

この世の中には、愛する人と死に別れたり、

その他、辛いことは山ほどあって

[人生はこの世だけ]と思うと

いっそう悲しいわけですが、

仏教には[三世の思想]というものがあります。

その1つは、遥かに遠くてわからないような過去の世の中で、これは[過去世]というのですけれども、私たちはそれを知らないで、ずっと生きてきたわけです。

 

二つ目は、いま生きている[現世]で、この現世が終わると、今度は三つ目の、無限のはかり知れない長い長い[来世]に入ります。

 

つまり、無限の過去世があって、その向こうにまた無限の来世があるのでして、いま私たちが生きている現世は、過去世と来世の間にはさまった世界で、サンドイッチのハムよりもはるかに薄っぺらなものなのです。

 

その短い短い時間に、私たちはあくせくして、誰かを怨んだり、悔しくて泣いたり、病気で苦しんだり、借金が返せなくて破産したり、いろいろなことを繰り返しているわけです。

 

しかし、私たちが、この現世を[長い長い過去世と、長い長い来世の間に挿まれた、ほんの短い時間だ]と思えば、それに耐えることは、そんなに難しいことではありません。

 

私たちは、この短い現世で、いろいろな試練に出合いますが、それをごまかさないで、誠心誠意、一生懸命に凌いでいったら、無限の来世で楽に生きることができるのでして、これを[三世の思想]と言って、仏教の根本思想になっております。

 

そのように思えば、いまどんな悲しいことがあっても辛抱できるのでして、私はいろんな悩みをもっていらっしゃる方々には、そう言ってお慰めしております。

 

瀬戸内寂聴師

 

 

       高齢化社会と福祉の心

 

僕は編集局長に直訴して、事件記者から高齢化社会の記者に配置換えしてもらって、沖縄から北海道まで、自分の足で歩いて、現地を取材するのに2年間かかりました。

そしたら、すごいことがわかってきました。

 

1つは、65歳から上の人は、10人のうち2人が寝たきりで、

65歳以上の自殺者が、年間5千人余りもいるということでした。

 

自殺の原因は、医療の問題と、もう1つは、年金では暮らせないないので、アルバイトをしていたのだけれど、身体が弱ってきたために、アルバイトを続けられなくて、そのまま自殺してしまったというケースでした。

 

そんなこんなで、日本の高齢化社会というのは、厚生省がこれからどんなケアーをするのか知りませんが、そんなに明るくないと思います。

 

それを明るくするためには、どうしたらいいかというと、結局、

一人一人の努力しかないのでして、国とか県などの行政も一生懸命にやっていますが、最終的には、本人がその気にならないと、何にもできません。

 

いってみれば[自分で自分を守る]という発想を頭の中にガーンと入れておくことで、たとえば、馬を泉まで連れてくることはできますが、水を飲ますことはできない。馬がその気になって飲まなければ、どうしようもないわけです。

 

高齢化社会もおなじで

「これとこれをやりなさい」

と言ったって、最後は[自分で自分の健康を守るんだ]と思って努力をしなければ、いくらお医者さんがたくさんいたって、どんな制度を作ったって、何にもならないのでして、個人がどうするかが問題です。

 

江守陽弘氏