断っていい頼まれごと

断っていい頼まれごとの三原則


「頼まれごと」について、もう1つ言っておかなければならないことがあります。「頼まれごと」であっても「断っていい三原則」と言うものを、私なりに発見しました。
これはたくさんの人の質問の中から浮かび上がってきたことです。


断ってよいことの1つは、「お金」「借金」の問題です。
「お金を貸してくれと言われて、それも頼まれごとだから必ず応じなければならないのか」という質問がたくさんありました。
「応じなくてよい」というのが私の答えです。と言うのは、「お金を貸してくれ」というのは、その個人、人間に用があるのではありません。そのお金に用事があるわけです。ですから頼まれた人は断っていいと思います。お金があればその人である必要は全然ないというのが借金です。ですから、借金というものは断っていいと思います。

「頼まれごとを断らない」と言っていたことで、私もずいぶん変な手紙を受け取ることがありました。
「何月何日の講演で前から何番目の右から何番目にいた人間ですが」という手紙が届くのです。「何月何日までに二千万円ないと会社が倒産する。頼まれごとを断らないという講演の内容を聞いたので、何月何日何時までに二千万円を振り込んでくれ」というような手紙でした。
年に何通かこういう内容のものが来ます。すべては私はまったく顔も知らない人で、友人でもありません。名前も全然わからず、しかも、その手紙を書いてきた人はみんな1回しか私の講演に来ていません。何回も来て、顔なじみになって、友人になって、それで「お金を貸してくれ」と言う人はいないのです。なぜか、1回だけ私の話を聞いて「お金が足りないから振り込んでくれ」といきなり手紙を寄越すのです。

「何列目の何番目にいた物である」と言われても、まったく覚えがありません。いくらなんでも容易すぎます。80円切手を一枚使っただけで、「2千万円のお金を振り込め」というのは常識的ではありません。


その人たちの手紙に共通しているところがあります。それは「どのように返すか」という方法論をまったく書いていないということです。さらに共通しているのは、何かを担保にして「その担保の形としてお金を入れてくれ」ということもまったく書いていないということです。ただ口座番号が書いてあって、「何月何日何時までにいくらいくらを振り込め」というものでした。


もちろん全然知らない人ですから私は振り込むことはありませんが、年に何通かそういう手紙が来ます。これは私にとっては「頼まれごと」ではありません。お金に用事があるのであって、私に用事があるのではないからです。


「頼まれごと」として断ってよいことの二番目。それは「頭数を合わせたい」というものです。
「忘年会で欠員が出た。一応10人で予約をしているので、9人だと困る。急遽来てくれないか」というようなものです。
ゴルフの場合も、「4人1組で回っているのだけれども、欠員が出た。明日来てくれないか」というような「頼まれごと」です。


これも、その人の個性や人格に関わりがあるわけではありません。ただ頭数をそろえたいだけなので、個性や人格に関係ない「頼まれごと」は断ってよいと思います。「頭数をそろえるためだけに声がかかってきたもの」というのは、基本的に「頼まれごと」ととらえなくて良いと思います。


3つ目の「頼まれごと」で断ってよいのは、「完全にできないということがわかっているもの」です。
たとえば「200キロのバーベルを持ち上げてくれ」と私が言われたとします。200キロのバーベルを持ち上げたこともありませんが、チャレンジしてみようという気にもなりません。

それは絶対に無理であるということがわかっているからです。オリンピックの選手でさえそんな重さを持ち上げません。ましてや虚弱体質のわたしにそれができるわけがありません。
「月に行って月の石を拾ってきてくれないだろうか」と言われても、それはできません。お断りするしかありません。「初めからできないことがわかっているもの」については断ってよいと思います。


しかし、たとえば「PTAの役員をやってくれ」とか「町内会の役員をやってくれ」という話についてはできるかできないかはわかりません。どこかの会合で「3分間のスピーチをしてくれ」というのも、やったことがないのであればできるかどうかわかりません。
そういう場合は「できない」と断るのではなくて「わっかりました。お引き受けします」と引き受けた方がよいように思います。
「できないことは基本的に頼まれない」からです。


神様が見ていて、「たぶんこの人はできるだろう」と思うから頼んでくれるわけです。ですから、やったことがなくてできるかできないかわからないことについては引き受けるとよいと思います。
ちなみに私は「200キロのバーベルを持ち上げてくれ」と言われたことは1度もありません。さらに「月の石を持ってきてくれ」と言われたこともありません。

                     小林正観